現代の鮮烈な色彩と、韓国の伝統がたたえる深い色合い。《Joie》は、そのふたつが出会い、ひとつの調和へと結ばれていく作品である。能化紙のうえで幾重にも重なりあう色彩は、さまざまな素材が寄り合って完成する〈タコス〉の姿にも似ている。
作家はこの「重なり合うこと」をフランス語の joie(喜び)に重ね、「重なり合うことの心地よさ」という意味をタイトルに宿した。色と文化、伝統と空間とが出会い、そこから喜びが立ち上がる — そのプロセスを視覚へと翻訳した一作である。
Suin Paper · Artist
スインペーパー 代表 国家遺産保存処理技能者
伝統は、いつも私の指先で生まれかわる。
Artist
スインペーパー(suin paper) 代表 国家遺産保存処理技能者
Statement
伝統は、いつも私の指先で生まれかわる。
木版に文様を刻みながら、私は耳を澄ませている — 過去の息づかいに。刃が木目を辿るそのとき、古い技がいま、この一瞬のなかに呼び覚まされる。そうして立ちあがる能化版は、私にとって単なる道具ではない。記憶をやどす一枚の版面である。
能化版のうえに韓紙をのせ、石でゆっくりと押し当てて文様を写しとる — それは、時間そのものをしずかに刻みつける所作に近い。この反復と呼吸のなかで、能化紙は「伝統」という言葉を越え、それ自体がひとつの表現となって立ちあがる。けれども、私はそこに留まらない。伝統の深みと、現代の感性とが出会うとき、はじめて今日の私の表現が完成する。
受け継がれてきた美しい文様の上に、現代の色彩・構成・余白を重ね、伝統と現代がしずかに響きあう — そんな「間(あいだ)」の美学を提示したい。
Works
現代の鮮烈な色彩と、韓国の伝統がたたえる深い色合い。《Joie》は、そのふたつが出会い、ひとつの調和へと結ばれていく作品である。能化紙のうえで幾重にも重なりあう色彩は、さまざまな素材が寄り合って完成する〈タコス〉の姿にも似ている。
作家はこの「重なり合うこと」をフランス語の joie(喜び)に重ね、「重なり合うことの心地よさ」という意味をタイトルに宿した。色と文化、伝統と空間とが出会い、そこから喜びが立ち上がる — そのプロセスを視覚へと翻訳した一作である。
《담음 — 能化紙 Layer》は、能化版から刷り出された伝統文様を地として、その上に現代的な色調と幾重ものレイヤーを静かに重ねていく。能化紙の質感と文様は最下層でしずかに息づき、その上を流れる色彩が、作品にいまの時間をあたえている。
伝統という枠組みのうえで、現代の感覚があらためて編みなおされる — その一瞬を、この作品はとどめている。
朝鮮時代、とりわけ正祖の時代における冊架図は、知と品格の世界を象徴する装飾絵画であった。ハ・ヒョジンはその冊架図がもつ秩序と構造の美しさを、伝統の能化文様へと置き換え、新たな視覚空間として再構成する。
作家自身が刻んだ能化版から刷り上がる能化紙は、冊架図の端正な背景を、現代の感覚へと拡張していく造形的なキャンバスとなる。梅竹文がくり返される表面のうえに深い色彩と構造的な構成が重なり、受け継がれてきた文様は「知の空間」を内包する、新たな〈場〉へと姿を変える。
書物の代わりに能化紙のテクスチャーが敷きつめられる — ハ・ヒョジン流の冊架図。伝統と現代が交差するその瞬間が、ここにある。
Gallery
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